モノを生成する際のきっかけとして、大きく2つのエントリーの区分が考えることがある。プロダクト・アウト(Product-out)とマーケット・イン(Market-in)というやうだ。要は出来ることを起点とするか、やるべきことを起点とするか、という二律背反だが、最終的には両方を合流させることになる。できることとやるべきことを一致させるのだ。
では、コトを生成する場合はどうだろう?
私が考えるに、そこには第3のファクターとして、「権力」が介在するように思う。砕いて言うと、1.できること、2.やるべきこと、に対して、3.やりたいこと、という要素が加わる。ここを起点とするパターンをPower-Driven(権力駆動)と呼んでみる。
政策分野の用語にジョン・キングダン提唱のAgenda−Setting理論(以下AS理論)というものがあるが、このフレームワークはまさに「コト」が生成される際の、この3つのファクターの相互作用を記述しているように思う。
AS理論では、Problem 課題・Policy政策・Politics 政治 の3つのPのファクターが揃うことでコトが動き出すという。粗い読み替えではあるが、大枠では、課題=Market Needs、政策=Solution、政治=Powerであると言っていいだろう。キングダンの論では、コトを動かすためには、この3つをすべて揃える必要がある。つまり、1.Market-in,2.Product-Out, 3.Power-Drivenの要素が同時に必要ということだ。
俗に言ってしまえば、力を持った人のやりたいことであるかどうか、もある程度加味しなければ物事は動かないということになる。
これはロマンチックな考えではないかも知れないが、現実問題として、何かコトを動かすには(特に大きなコトであればあるほど)、権力を背景とした推進力=トルクが必要である。しかし、この当たり前のリアリティは、見る人によっては目を背けられがちだ。
この3つを同タイミングで合流させる最適ポイントとなるような「コト」を見極めて運ぶのは簡単ではない。そういったことができる人は、みるところかなり希少だ。しかし、私はそういったことに興味がある。データ分析は、このアジェンダ・セッティングに資する可能性が高いから、関わってこれたのかも知れない。
テック界隈やデータ業界のナイーブな人たちは、この第3の要素から目を背けたがる。正しいニーズに沿った、良いプロダクト、であればそれだけで何事もうまくいくはずという前提に準じたほうが、世の中は楽である。しかし、政策や戦略、人事といった「コト」も一つのプロダクトとして捉える、より広範な領域に身を晒す者にとって、第3のファクターPower-Drivenは避けて通れない。そういった場面を多く経験してきた。
適切なコトを適切に動かす能力=課題設定力は、人間に残されたフロンティアであると思っている。課題設定は、課題“発見”とは違う。世界は、発見されたものの放置されたままの課題に満ちている。課題の発見や指摘、そして課題の解决などはAIが侵食していくかも知れない。しかし、この「第3のファクター」の存在と、3つの要素の合流の難易度の高さから、課題設定は人間の手に残り続ける。
正しい課題を見つけただけでは、到達度は1%である。それを動かすことが最も難しく、かつAIには代替されないことではないだろうか。
※興味がある人は、補足的にこちらの記事を読んでみてほしい。


