誰も知らない わたしが何なのか
都心には、商業施設が次々と出来る。
ここ10年で、大きいところで言っても、日比谷ミッドタウン、渋谷スクランブルスクエア、麻布台ヒルズ、MIYASHITA PARK、ハラカド原宿、TAKANAWA GATEWAY CITY等々。
新しい商業施設にミーハー心で行くほど若くはないが、ここで挙げたような商業施設は、少なくとも何度かは行っている。ハラカド原宿はPodcastの録音スタジオがある関係で定期的に行っているし、他にも幾つかは折りに触れ、足を運んでいる。
かつては、六本木ヒルズや、東京ミッドタウンが職場であったこともあった。広々として、垢抜けた華やかさがある、都心の大型商業施設は嫌いではない。
僕が思い描く都心の商業施設の王座は、GINZA SIXである。あの立地に、あの洗練された佇まい、銀座の中央通りに面した、FENDI・CELINE・Diorといったグランメゾンのディスプレイ。奥に和を感じさせる雰囲気も好きである。
調べてみると、施設の企画開発に、日本の会社の他に、L Cattertonが関わっているらしい。ルイ・ヴィトングループ系列の不動産会社である。あの麗美さは、そのあたりの関与も大きいのだろうか。同社は、渋谷の東急本店跡地の進行中の商業施設開発にも関わっているはずだ。楽しみである。
GINZA SIXが好きなのは、オープン時のプロモーションに使われた、椎名林檎の「目抜き通り」のイメージの影響が大きい。同商業施設にピッタリの、現実世界のおとぎ話のような、不思議な曲である。ディズニーの楽曲が醸す魔法や奇跡のフレーバーを、現実世界に実装させたような…そんな夢想と現実を兼ね備えた、唯一無二の雰囲気の音楽。
プロモ用のショート版、フルのPV版、ライブ版の3つの映像が出ているが、どれを見ても本当に素晴らしい。それぞれに、違った良さがある。
特に、フルのPV版は、映像の機微も秀でている。椎名林檎とトータス松本が歩いていく一本道は、主題のとおり「目抜き通り(=メインストリート)」のメタファーであり、かつ人生の道でもある。二人の歩き方は一様でなく、人生への祝福と享楽、人それぞれの個性を感じさせる(特に、1:28辺りの、二人が各々でクルッと廻るシーンは、なんとも麗しい)。
誰も知らない わたしが何なのか
当てにならない 肩書きも苗字も
今日までどこをどう歩いて来たか
わかっちゃあいない 誰でもない
本番さショータイム終わらない
ああ 生きている間ずっと愛し愛され歩いて行こうよ
銀座は、春
- 椎名林檎とトータス松本「目抜き通り」
この、高揚と華やかさ、人生の享楽を極限まで表現した楽曲は、凄い。享楽、といっても、消費ではなく、「暇と退屈の倫理学」で言うところの“浪費”の感覚に近いのであろうと思う。
聴けば、自然に街に出たくなり、何かを買いたくなる。これほどインドア派で、消費欲が薄い僕であっても。
かつてのGINZA SIXは、豪奢さだけでなく、カルチャーを強く感じさせる場所だった。しかし、最近は高級なゴルフブランドのショップがやたらと増殖するなど、Covidの時期を経て、少しコンセプトを変容させたようだ。客層も、どうしてもインバウンドと成金趣味の中高年層が目立つ。今でも好きな施設ではあるが、昔ほどの魔法は感じない。
一方で、「目抜き通り」という楽曲の持つ力は、10年近く経っても全く色褪せない。僕は、日本の音楽史の中でも、ずっと語り継いでいくべき名作中の名作だと秘かに思っているのだが、どうだろう。
ああ、聴いていたら、何か買いたくなってきた。
もしよろしければ、本ブログをシェアお願い致します。
貴方のシェア経由で新しい方が登録しましたら、特別なメールをお送りします。

