秘書がいる。
デジタル庁でCxOに就いてから、秘書が付くようになった。どういう制度背景なのかは詳しくわからない。一応、規定上はCxO職は審議官級らしく、審議官には秘書が付くのが一般的、的なことなのだろうか(審議官とは、政府で順当に出世した人が50代前半〜程度で就く、それなりの職位である)。
社会人の中でも、秘書が付く経験をする人は決してマジョリティではないであろうから、貴重な経験である。
秘書の存在は、有難い。私はズボラなので、事務的なことで色々と助けられている。他の省庁に行く際の車を手配してくれたり、スケジュール調整をしてくれたり、僕が苦手な書類申請などを手伝ってくれる。実務以外にも、人生と先輩なので、子育ての相談などにも乗ってもらっている。先日は、オススメの絵本を教えてもらった。今でもムスメの大のお気に入りの本だ。
秘書は、リモート勤務や庁内の打ち合わせで、離席していることが多い私が席にいるのを見れば、ツカツカとやってきて、色々なことを、リマインドしたり、細かく確認してきたりする。世話焼き力が高いのである。
彼女は人柄が良く、明るく、親身で、人に入り込むのが上手い。なので、何を口煩く云われても、前向きな気分になる。
AIはどうだろう?Agentic AIの革命によって、各々にAIの秘書が付くような世界になる、というのは、みんなが好きそうなストーリーだ。
確かに、AI秘書は、便利そうである。ムスメの月齢に合った、絵本を教えてくれるかも知れない。スケジュールの調整や、配車やリマインドをしてくれるかも知れない。
僕が興味があるのは、私たち人間は、AIに対して、「君がそう言うなら」「君のために頑張るか」という気持ちで、行動できるかどうかという点である。
人間の秘書には、そういった機能がある。
秘書にリマインドされたから、思い出して行動する、のではない。大抵のタスクは、云われずとも覚えている。ただ、面倒だから後回しにしていることが多い。それを指摘された時に、それ以上秘書を心配させてくないから、タスクを消化するのである。
秘書が教えてくれた、「その絵本の存在という知識」に価値を感じているのではない。絵本を買ってムスメに読み聞かせ、それを秘書に報告して喜び合う、というストーリーまでを期待して、絵本を買っている。
今のところは、相手が「ヒト」だからこそ起こり得る感情だと思っている。僕は、習慣アプリが発してくる、機械的なリマインドによって、行動を喚起されたことがない。運動習慣を付けたければ、(人間の)パーソナルトレーナーと毎回、次の約束をしてジムを後にするしかないと思っている。
人間であれば、相手は、時間的にも肉体的にも有限で、感情を持っていると、当然考える。故に、その期待を裏切りたくないと、感じる。対して機械は、リソースが無限で、感情を持っていないという前提を置いているので、機械との約束には、何らオブリゲーションを覚えない。
近い未来、AIはこの谷を越えてくるだろうか?そういう日も来るのかも知れないが、僕はその日を待望してはいない。
僕は、ムスメの月齢をちゃんと覚えていたり、たまに忘れたりする、おせっかいな、いまの秘書が好きである。
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