知人と、村上春樹の話をした。
その知人は、村上春樹は素数が好きなのだと、教えてくれた。曰く、「素数とは(1を除けば)自分以外の誰でも割り切れることのない、割り切れないものを抱えた孤独な存在であるから」らしい。
あいも変わらず、ハルキらしい詩人っぷりである。
しかし、僕は反論した。「それは世界の捉え方によると思う。自然数だけに目を向ければそうかもしれないが、13という素数は6.5という小数で割り切ることが出来るし、-13という負値で割ることもできる。自分の常識の外にまで世界を広げれば、理解してくれる誰かが、どこかにいるかもしれない。インターネット時代ってそういうことじゃないのか。」
そしてこう続けた。「虚数を見てみろ。正数値にしか双子はいないと思われていが、負数値にも双子がいることが示される。9が3の双子で出来ているように、-4は2iの双子なんだぞ、驚きだ。それが人間の発明ってもんだろう。」
恐らく、いや間違いなく、知人が聴きたかった返答ではないと思う。僕は、村上春樹の小説にでてくる、主人公の変な友人のキャラのようになっていたかも知れない。
それは兎も角、村上春樹は素数が好きらしい。自身のラジオでは、曲名に2,3,5,7,11,13といった素数が入っている楽曲を順番に掛けていくという。嫌味なまでにおしゃれである。
村上春樹と音楽といえば、不思議なことがある。僕はRadioheadが好きだ。彼らのThere, Thereという楽曲が、ライブナンバーとしても秀逸で、好きなのだが、この曲は何故か村上春樹を思い出させる。世界の終わりとハードボイルドワンダーランド、に出てくる、“やみくろ” という謎の生物が住む暗い洞窟のくだりを想起させるのだ。
ちなみに、この小説の物語の細部は覚えていない。村上春樹自体、もう20年以上読んでいない。やみくろ、が何だったかもよく覚えていない。ただ、その雰囲気を覚えていて、There,Thereを聴くと自然とその雰囲気が思い出されて...というわけである。
Just ‘cause you feel it Doesn’t mean it’s there
(Someone on your shoulder)感じるからと言って、そこにいるとは限らない
(なにものかが君の肩に)
改めて歌詞を読むと、統合失調症などの精神病、気候変動や政治などの人的な災害によるカタストロフィ、など、いろいろな読み方が出来なくもない。
なお、後から知ったのだが、村上春樹はRadioheadのリスナーで、トム・ヨークは村上春樹が好きらしい。やはり何かの影響はあるのだろうか。
謎である。
ただの偶然かもしれないが、割り切れない。


