創作には窓が必要だ
Off Topicが終わり1、その余波で、Zero Topic by yamottyも最終回を迎えてしまった。それに際して、yamottyは一人Podcastは続かない、というポストもしていた。
この件については、直接会った時に少し話した。なぜ終えることにしたのか、いくつか理由はあったようだが、「フィードバックのなさ」というのも、要因として、小さくはなさそうだった。Podcastはエンゲージメントの高いメディアで、聴いている人の熱心さは数字からはそれなりに分かる。しかし同時に、実は、視聴者からの具体的な反応を得づらいメディアでもある。
皮肉にも、最終回を公表したことで、別れを惜しむお便りが多く寄せられたらしい。「気持ちは嬉しいが、送るならもっと早く送ってくれれば、もっと続けられたかも知れない」、と彼は言っていた。
こういうことはよくある。離職すると言われてから給与を上げるからと言ったり、別れ話をされてから愛を語られたり。しかし、情熱を失ってしまった後では、全てが遅いのだ。消費者側からはあまりわからないが、創作者は消費者が考えている以上に、反応を欲している。
5/13の夜は、小沢健二のライブに行ってきた。
楽曲は、もちろん最高。だが、このライブでは全体的に、彼の苦悩の軌跡が見えて、それが何よりよかった。MCでは、過去のヒットに対する世間の目線に対する苦悩や、過去と今の自分の対比について、多くが語られた。
序盤に演奏された「ある光」には、そんな思いが垣間見える。
連れてって 街に棲む音 メロディー
連れてって 心の中にある光
この線路を降りたら赤に青に黄に 願いは放たれるのか?
今そんなことばかり考えてる— ある光(小沢健二)
線路を降りる、というのは彼の世間的なイメージ、規定の売れ筋路線のゲームから降りる、という可能性の隠喩と捉えていいだろう。その時に初めて、彼の人間性の全ての色が復元され、作られたイメージでない、本当の小沢健二として生きられるのではないか。そんなことを何度も考えたのだろう。
このライブを通底するテーマとして、「プリズム」が据えられていたように思う2。連続スペクトルから、特定波長だけを取り出してしまう装置。それは、他人からの視線と同様だ。消費者は、何かの期待を持って、その創作物(とその創作者)を見ている。創作者の全体を見たいわけではない。プリズムを通して、自分が見たい色だけを手に入れようとする。小沢健二はこうあってほしい、カート・コバーンは、ダミアン・ハーストは、ステラ・マッカートニーはこうあってほしい… そのイメージに背くと、消費者は途端にそっぽを向いてしまう。
そして、意外に思ったのが、葉書3にメッセージを書いて送ってくれという、彼の口から繰り返されるお願い。本当に、何度も何度も、言っていた。
創作には、他者のフィードバックが必要だ。
消費者は、意外と創作者にフィードバックを直接届けようとしない。必要ないと思われているのかも知れない。そんな時間はないのかも知れない。あの人は凄いから、自分の声なんて必要ないと思っているのかも知れない。結果、消費者が考えている以上に、創作者に届けられるフィードバックは、少ない。そして、消費者が考えている以上に、人からもらう反応というのは、嬉しく、創作の力になる。
もしその創作を見続けたいのなら、リアクションを寄せてあげたほうが親切だ。
それは、あの天才と目されるオザケンとて同じなのだろう4。
チームで仕事をするなら、リアクションし続けよに書いてあることも、近い話だと思う。僕はこの記事が好きだ。
あるアイデアに対して、それいいね、と声をもらったとき。いい顔が見えたとき。姿勢が前のめりになってくるとき。そのときとあるアイデアは、はじめて光るのだ、形になる可能性を見せるのだ。…
(中略)….
ティム・インゴルドは、私たちの生とは「応答し続けること」であると述べた。完全独立した私自身から、美しい理想的なアイデアが、ある日突然浮かびあがってくるのではない。生きることとは、他のものたちの生に応答することそのものなのだ。そしてその応答は、また翻って、他のものたちの生をいきいきとしたものにする。
僕自身は、特に人に認められるために文章を書いているわけでは、ない。それでもフィードバックは嬉しいし、それが書くための意欲や、インスピレーションになる5。
ひとりで文章を書いていると、鏡しか無い部屋薄暗い部屋でウロウロしているような気分になる。
創作には窓が必要だ。部屋に一人だけで、創り続けるのは難しい。
外からの日差しと、他者からのハガキが必要だ。
僕も、オザケンやyamottyと同じく、いつだって自分の創作への反応を待っている。書き続けられるのは、見てくれている人を感じられるから。いつもありがとうございます。
僕らが普段見ている可視光は、いわゆる連続スペクトルで、全ての波長帯が重なり合って、白色を成している。プリズムを通せば、このうち特定の波長帯域の光が取り出せる。それが赤や青や黄や紫などだ。
ツアーキットにハガキが同梱されていた。
オザケンの往年のファンをしているデジタル庁の同僚曰く、手紙やXの返信などは全部読むタイプらしい。


いつも楽しく読ませていただいており、長く続けていただけたらと思い、初めてコメントします。
別日にライブ行っており、同じ感想を持ちました。古いファンにも今のオザケンに至る道筋がわかる(でも説明臭くない)素晴らしい内容だったと思います。こんなふうに歳取りたいな。強気強愛聴けると思ってなかったので嬉しかった。
座る、立つもご指示があって、アラフィフには助かりました笑
一人創作はフィードバックなくて寂しいので収録しましょ